戦争の世紀を超えて(森達也+姜尚中:講談社 2004/11 1890円)
名作「A」を撮影したノンフィクション映画監督と気鋭の社会学者の二人が、人はなぜ殺し合うのか、戦争はなぜなくならないのか、という重いテーマに正面から向き合った対談集。
ナチスドイツのユダヤ人虐殺、クメール・ルージュによる自国民の大量処刑、オウムが起こしたサリン事件、関東大震災時の朝鮮人殺戮、朝鮮戦争における同じ民族同士の殺し合い…。
これらの悲惨な大量殺人を起こした戦争や犯罪は当事者が邪悪だったから起きたのか。
いや、逆に無垢だから、ピュアだったから、何かのきっかけで理性のたがが外れ極端に残虐になり、取り返しのつかない事を起こしてしまったのだと二人は喝破する。そして、落ち着いて自分のやったことを振り返ったとき、あまりの悲惨さに呆然とする、ということの繰り返しだと言うのだ。
ブッシュが起こしたイラク戦争についても、石油利権と軍需産業の後押しだけでは説明がつかない。あくまで圧政に苦しむイラク市民を救う、世界を救う、という「善意」が原動力となっていると彼らは言う。
僕は彼らの行為が100%善意から来ているとは思わない。しかし、軍事行動の「支え」になっていることは事実だろう。怖いのは、いつその「善意」の矛先がイラク・北朝鮮ではなく日本に向いてもおかしくないということだ。アメリカの言うこと全てに追従するというのは、そんな事態が起きたときに、逃げ場がなくなるということを意味している。だって、そんなワンワン国家をヨーロッパやアジアの国々は守ってくれやしないから。
もうひとつ。「第三者の使命」ということが強調されている。これは、被害者に同情して、加害者を過度に責め立てることによって、「殺戮の連鎖」が起きることを戒め、あくまで第三者としてフェアな判断を下すべきと主張する。日本は「唯一の被爆国」「戦争放棄を宣言」した国として、第三者としてふるまえるはずなのに、対米追従を国是とすることを批判している。
おっしゃる通り。せっかくの立場を無駄にしている日本は、本当にもったいないと思う。
争いは、殺し合いは無くならないのか。
森達也はジョン・レノンのイマジンの一節を引いてそれを否定する。
すべての人々が、世界を分かち合っていると思ってごらん。
君は僕を、夢見ているだけだというかもしれない。
でも僕は一人じゃない。
君も僕らと共に思うだけで、きっといつかは世界が一つになる。
そう、世界の人々がオプティミストかつリアリストになれば、世界は変わる。
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